25年もこんな仕事をしていると色んな傾向が見えてくる。
確実に言えることは子供は親が育てているという事だ。
否定的な事を言って育てると自己評価が低く、
上手くいかない事の多い子供が育つ。
その生徒は医療機関からの診断を受けていたらしい。
学習障害等いくつかがあるとの事だ。
私が関わり出した中学生の時の勉強はめちゃくちゃだった。
円の面積と円周を求める計算に1時間をかけても結局出来なかった。
1時間もかけた私が悪かった。
英単語は見た事もない綴りなのに自分で○を付けていた。
両親ともやたらとキチンとしていて優秀な人という印象だった。
話しの端々に子供を否定し謙遜しすぎる言葉があり、何とかして少しでも上に行かなくてはという現状を受け入れたくない様子がある。
円の面積の出し方が覚えられない生徒なので普通には教えられない。
出来る所を少しずつ、何度も繰り返してやる事が大事だ。
学校の授業が解るようにする配慮も必要だ。
教えた所を翌日等に自分でやってくれないと身につかない。
何回言っても自分ではやらなくて毎回同じ事を教えた。
叱り過ぎると萎縮するので緩めに指導する。
やらなかった理由はモゴモゴと不思議な言い訳をする。
とにかく勉強はまるで進まない。
ある日私は見つけてしまった。
問題集に大人の文字で説明がかいてある。
私が教えていた所よりもずっと先の難しい所だったので気が付かなかった。
教師であるお父さんと毎晩勉強をしていると彼は白状した。
生徒は怯えていた。
私が本気で怒ると大阪弁でお父さんよりもずっと怖いから頑張りなさいとお母さんから聞いていたらしい。
お父さんと話した。
焦る気持ちはわかる。
しかし是迄沢山やって上手くいかないから依頼したんでしょう?
是非私に任せて欲しい。
私がやった事の復習をして欲しいが、現状ではお父さんの勉強には萎縮しているのでしばらく手を出さないのはどうだろう。
お子さんにもキチンと話しをして、こういう作戦でやると理解させて欲しい。
もちろんお父さんの子供なのでお父さんがやっても良いが、それなら私は辞めさせてもらう。
そんな話しをした。
私が任せられる事になった。
生徒は何とか駒工に入った。
奇跡に近い大躍進だった。
それなのに入試の点数が低くてすみませんと侘びてきた。
近所にある駒工の門が高くて輝いていた。
ロボコンで活躍してその後は立派な社会人になった。
教師の父親は話せばわかってくれた。
話さないとそのままだっただろう。
こういう父親と面と向かって話せるのは私が私だからだ。