移住してきた頃は毎年今くらいの時期になると自転車に乗った郵便配達のバイトらしい人達を見かける事が多かった。
よく見たのは「赤穂高校」と書いたジャンパーを着たボウズ頭の人達だった。
寒い中を真っ赤な顔をして白い息を履いて必死に坂を登る姿は蒸気機関車の様だった。
横からの雪を受けて半分白くなって自転車をこいでいた事もあった。
沢山雪が降った次の日にゼリーの様にジュルジュルになった水たまりを足首まで浸かって自転車を押していた事もあった。
私も高校生の頃は年末年始の郵便配達のバイトをした。
駒ヶ根よりは随分と大きな街だったので移動距離は長かった。人が沢山住んでいる駒ヶ根の地域と同じくらいの坂道は大阪にもあった。
それでもしんどいと思う程ではなくて楽なバイトだった。
駒ヶ根は大阪と比べるとずっと寒い。
その分はずっと大変だろう。
赤穂高校の野球部の生徒に勉強を教える事になった。
郵便配達の事を話した。
みんなでバイトをして稼いだ金で野球の道具を買うらしい。素晴らしい事だ。
体力づくりにもなると話したが、「その程度じゃ足らんやろ」とそっちはオマケ程度だと思った。
いつの間にかそういった人達を見かけなくなった。
今年はさらに「年賀状仕舞い」が進むようなのでもうあのバイトの姿は見られないだろう。
野球道具のお金は親が出して、生徒は勉強に追われて学習塾に通うのが今時の年末年始なのかも知れない。
あの頃の学生の方が沢山の経験が出来たはずだ。