2024年05月10日
カサブランカ

25歳の年末年始にカサブランカを旅した。
アフリカ北部の地中海と大西洋に面したモロッコという国にある町だ。
イスラム教を信じる人が多いようでヒジャブと呼ばれる白い布のワンピースの様な服を着た人が多い。
圧倒的に男性が多いのも宗教的な理由で女性はあまり出歩かないのかと思った。
旧市街はゴチャゴチャで迷路の様だ。
よりによって旧市街の安宿を選んだ。
あてがわれた部屋には男が一人寝ていた。
宿主に何か言われると僅かの荷物をまとめて出ていった。
シーツを替える事はないままで私の部屋となった。
木枠の隙間だらけの古い窓からは喧騒がモロに聞こえる。
時々コーランなのかスピーカーから大音量で何かが聞こえる。
ベッドはバネの場所がわかる様なフニャフニャで思い切り沈んで寝にくい。
最大の問題はトイレだ。
共用なのだが使い方がわからない。
真ん中に小さな穴があって水が溜まっている。
水道と小さなバケツがある。
紙はない。
壁には正体不明の指でこすった様な跡が幾つもある。
『壁で手を拭くのか?』
流石にこれはキツイわと思い考えに考えた。
旧市街に公衆トイレがあったとしてもホテルのものと似たりよったりだろう。
高級ホテルが近くにあるとガイドブックに書いてあった。
『これや!』
トイレを借りるだけというわけにはいかんやろうけどディナーは高そうだ。
カフェなら何とかなるだろう。
それでも高いかな?
防犯の為に小汚い服装でやってきたのだが入れてくれるだろうか?
日本のパスポートを見せれば大丈夫かな?
ドキドキしながらホテルに入った。
入り口にはボーイの様な人がいたがすんなりと入れた。
凄く格好良いホテルだった。
「カサブランカ」という町と同じ名前の有名な映画の舞台となったホテルらしい。
映画俳優の写真が沢山貼ってあった。
クラシック高級ホテルという雰囲気で多少ビビった。ヨーロッパに住んでいたのでなんとか付いて行けたが日本から来たら完全にビビっていただろう。
レストランはカフェタイムの様で客はほとんどいなかった。
オレンジジュースは思った程は高くなかったが泊まっている安いホテルの宿代と同じくらいだった。
トイレは近代的なヨーロッパと同じ程度のもので安心した。
何となく落ち着かなくて早目に高級ホテルから安ホテルに戻った。
翌朝は4時くらいに外のスピーカーからのコーランの様な音で目が覚めた。
長距離バスに乗る為に5時過ぎにホテルを出ようとするとロビーのソファに昨日私の部屋にいた男らしいのが寝ていて何も言わずに寝たまま手を出してきた。
部屋の鍵を握らせて僅かばかりの知識のフランス語で「さようなら」と言うと頭まで被ったシーツの中から「さようなら」と返してくれた。
Posted by sawch at 07:49│Comments(0)
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