2023年05月05日
春野ゲストハウス

高知市の少し西の春野にあるゲストハウスだ…
5年前に続いて今回もお世話になった。
料金は素泊まりで3000円しない。
お遍路が通る国道の脇にある農家の離れをトイレとシャワーをキレイにして宿にしている。
5年前に泊まった時は私とインドネシア人の家族が泊まった。インドネシア人は高知市の大学に娘が留学していて卒業なので両親、おばまで一緒に旅行に来ていた。カワイイ娘と穏やかな家族だった。英語さえ娘しか話さなかったし、私も英語が流暢な訳ではない。それでも和やかな時間を過ごした。一階の居間で談話した後で彼女らは2階の部屋に戻った。
しばらくするとやけにドンドンと床を叩く音がする。
『良い人達だと思ったのになんであんなに騒がしいの?』
そう思いつつ2階に上がった。
彼女らの部屋の向かいに私の部屋があるがその中からドンドンと音がする。
部屋には誰もいないはずだ。
『彼女らが俺の部屋に勝手に入ってるの?』
そう思って部屋に入ると誰もいない。
恐る恐る灯りを付けた。
やはり誰もいないが音がしている。
良く見ると自動掃除機が勝手に動いていた。
「あ〜びっくりした。」
普通は一泊しかしないのがお遍路だ。
翌朝には出発する。
しかしその日は大雨だった。
もう一泊させて頂く事にした。
誰もいない居間でひたすら漫画を読んだ。
漫画は幾らでも置いてあった。
宿のおじさんが居間の横の玄関の様な事務所の様な所をずっとウロウロしている。
彼の家だし、特に気にしても無かった。
「ちょっとだけ良いですか?」
彼は古い日本地図を手に話しかけてきた。
「貴方の家はどこですか?」
日本地図を差しだしてそう言う。
さっきからウロウロしていたのは私に話しかけるタイミングを見ていたのだ。
「長野県の駒ヶ根市です。松本とか諏訪湖の少し南です。」
地図を出して駒ヶ根を見つけるとマーカーでグルグルと丸を付けた。
元はトラックに乗っていたらしくてその頃の日本地図には運送会社や倉庫らしい名前や電話番号がびっしりと書いてあった。
「私が言うのも変ですが上がりませんか?」
そう言って居間へ招いた。
居間に入るのはなんと初めてだと言う。
「これは家族でカンボジアに行った時の写真やね。こんな所に貼っていたんだ。」
自分達の写真を見て懐かしそうに言う。
おばさんの話ではおじさんは滅多に客の前には出ないらしい。
耳が遠いのと足が悪いので嫌だそうだ。
地図を見ながらしばらく喋った。
その日は夜まで含めて3回もやって来てくれた。
暇だった私には良い話し相手だった。
何故かその日は客は来なかった。
翌朝の出発の時にはおじさんはいなかった。
「昨日の夜は嬉しくてあんたの話しばっかりしていて寝られなかったらしくてまだ寝てるんよ。」
そんなカワイイおじさんだった。
今回訪れると「松本の南の方に住んでる人やな〜」と覚えていてくれた。
5年経って耳や足が悪くなっている。
その間には外国人を中心に軽く1000人を超えるゲストが来ただろう。
良く俺の事なんて覚えていてくれた。